幼児期は脳が最も発達する時期

 

 

生まれてすぐから、脳の活動は始まっています

 

生まれたばかりの赤ちゃんは、触れる場所(皮膚感覚野)と、見る場所(視覚野)、手足や首を動かす場所(運動野)が活動しているだけで、記憶したり、認知したり、考えたりする高度な働きを受け持つ場所は、まだほとんど働いていません。

しかし、月齢が上がるにつれ、だんだん脳の多くの場所が働き始めます。そして、各回路がほぼ完成するのは、目の情報を受ける視覚野が生後3か月ぐらい。聴覚野はもっとおそくて2歳ぐらいです。

見る、聞く、ふれる、味わう、においをかぐといった感覚野への回路は、1歳ころまでにほぼでき上がります。また、体の筋肉を動かす運動野も1歳くらいまでには大人に近い状態にまで完成します。つまり、人間の基本となる能力の大部分は、1歳にはほとんどでき上がっているということです。

これに対して、高等な働きをする場所の回路は、でき上がるのがもっと遅くなります。感覚野から伝達された情報を知覚して認知する頭頂連合野は、3~4歳。側頭連合野は5~6歳ごろ作られます。

もっと高度な働き方をする、考えたり判断したりする前頭連合野になるとさらに遅れて、生後6~7か月からだんだんとつくられ始め、20歳ごろにやっと完成します。

 

脳が最も発達する3から4歳ころまでに、あらゆる刺激を与え、体を動かすことがたいせつ

 

脳を発達させるうえで大事なことは、繰り返し刺激を与えて赤ちゃんの脳に情報を送り込む、神経回路のシナプスを強化することですが、それにはふさわしい時期があります。

その部分の神経回路がどんどん作られている最中に、タイミングよく刺激を与えると、シナプス同士がつながりしっかりした回路になります。

たとえば、視覚は1~2歳で完成しますが、赤ちゃんを2歳まで真っ暗な部屋で育てて、モノをいっさい見せないでいると、その赤ちゃんは目が見えなくなります。(これはサルの実験で証明されました)

視覚を育てるための刺激を与えるにふさわしい時期を逃してしまったために、見るための神経細胞の回路がつくられないからです。

同じように、生まれてから3歳になるまで全く言葉を聞かせず、しゃべらせることもしないでいると、その子は話せなくなります。

では、そのふさわしい時期とは、いつでしょうか?

先に述べたように、脳の場所によって回路のできる時期が異なるので、それぞれにふさわしい時期がありますが、総じて言えば、0~3、4歳ごろがいちばんのチャンスといえます。

このチャンスを逃さずに、いろいろなものを見せたり、音を聞かせたり、さわらせたり、体を動かしたりして、あらゆる刺激をたくさん与えてあげたいものです。そうすれば、脳のあらゆる場所が活発に働いて脳が発達し、また社会性も生まれてくるはずです。

 

逆に、「うちの子はおとなしくて手がかからないので助かるわ」と、寝かせっぱなしにしたり、一人ぼっちで何時間もテレビやビデオを見せておくなどは、脳の発達にとっても決してよいことではありません。

 

久保田 競 著 「赤ちゃんの脳を育む本」 より